第17章 彼女は去った

「……ママ、行っちゃったの?」

玄関のほうから、楓花の恐る恐るといった声がした。

黒谷優は顔を上げる。瞳に残る殺気に、楓花はびくりと肩を震わせ、一歩あとずさった。

けれど次の瞬間、ほっとしたように口元をゆるめ、ぱん、と小さな手を叩いてはしゃぐ。

「やったぁ! 悪いママ、やっといなくなった! これからは、おばちゃんが楓花のママになるの?」

さらに勢いづいたまま、黒谷優へ身を乗り出す。

「パパ! 早くおばちゃん、おうちに引っ越してもらお! 寝る前のお話もしてほしいし、おばちゃんのケーキ食べたい!」

無邪気で――そのくせ残酷な笑顔。

黒谷優の喉の奥に、鉄の味が滲んだ。

昔なら、き...

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